不動産登記をするときに気をつけないといけない大切なポイントが
いくつかあります。
その中でもとりわけ大切なことの一つが住所に変更がないかどうかを
確認することです。
たかが住所の変更なんて、そんなに大切に思えないかもしれません。
ですが少し考えてみて下さい。不動産はとても高価な財産ですよね。
そして不動産登記簿に記載のある所有者はその不動産の所有者と
いえます。その不動産の所有者が誰なのかを判断するときに登記簿に
記載の氏名だけでは判断できません。
同姓同名の人物は数多く存在するからです。
だから、住所と氏名の両方で所有者を判別する必要があるのです。
以上で登記簿上の住所の大切さはわかっても、それなら指摘
されてからやればいいじゃないかと思われるかもしれません。
連続性が求められる不動産登記では、どの登記をどの順番で
申請するのかはとても大切なのです。
例えば日本政策金融公庫の抵当権設定登記をすることとします。
登記簿上の住所から転居していることを見逃してしまった場合、
法務局からの指摘を受けて住所変更登記を申請しようにももはや
住所変更登記申請は出来ないのです。
どういうことかというと、住所変更登記は抵当権設定登記申請よりも
前にしなければならないのに住所変更登記を割り込ませる受付番号が
ないのです。
抵当権設定登記よりも前(直前)に住所変更登記をしなければ
ならない理由は、抵当権設定登記の際に添付する印鑑証明書の
住所と矛盾が生じて本当に所有者かどうか手続き上判断が
つかないからです。
そして登記の受付番号は単なる番号ではなく権利変動の
先後を決定する重要な番号なのであとからの割り込みはできないのです。
でも、あとから住所変更登記を申請しても法務局には
わかってもらえるじゃないかと思われるかもしれませんね。
事実上は確認できますが、登記という重要な権利をまもるため
登記の連続性に反することはできません。
それでは住所変更登記を申請し忘れた場合にはどうすれば
よいのかというと、登記申請を一旦全て取り下げる手続き
(登記申請していなかったことにする手続きを取下といいます)を
しなければなりません。
その後、住所変更登記を交えた登記申請をやりなおすことになります。
登記の完了まで更に日数がかかること、取り下げ手続きが
煩雑であること、売買などの場合には二重売買されていれば後の
申請者が所有者となってしまうといった様々な不利益が考えられます。
このようなことは決して許されないので、いつも穴が開くほど
住所に注意を払っています。
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そして、住所変更登記には住所の変更の沿革がつく書類が
要求されます。住民票や戸籍附票が主な書類です。
住民票には通常前住所が記載されています。ですが、それでは
登記簿上の住所との繋がり(引っ越しの変遷)がつかない場合には
戸籍附票が必要となります。戸籍附票とは本籍地で作成された戸籍に
附随して作成されるもので住所の変遷が記載されています。
ですが、戸籍附票はコンピュータ化での改製があったり、転籍をした場合
などの除かれてしまった後の保存期間は5年と短いので
住所の沿革がつかないこともしばしばあります。
このように公文書で住所の沿革がつかない場合には自分が
登記簿上の所有者であることを法務局に示していかなければなりません。
引っ越しの経緯などの事情を説明した上申書を作成する、
権利証を添付する、納税証明書を添付するなどが考えられますが、
管轄する法務局によって取扱が統一されているわけではありません。
不動産登記手続での、単純そうにみえて実は危険な一例でした。